文化財を維持する竹
歴史的建造物、歴史的工芸品、また、現代建築や工芸における趣ある竹の利用にはすばらしいものがある。近年マスコミ等で、竹が森林を浸食しているとか、そ れが災害を誘発する恐れがあるとか言われることがあるが、特用林産物を振興する立場からその美しい利用例を見て頂こう。
ホテイチク(布袋竹)
竹の下の方に寄り節ができ布袋の腹を連想させるのでこの名がついた。寄り節の面白味は和風建築の壁下地窓として利用されているものが多い。
鹿児島県ではコサンダケと称して広く栽培されている。かつて、寄り節を利用して高級釣り竿が大量に輸出されたが、現在はむしろタケノコ栽培に重点が置かれている。
クロチク(黒竹)
この竹は、真っ黒あるいは黒の斑点ががゴマ状に現れる。
その黒色の稈は主として工芸品として利用され、典型的な利用は壁下地窓であるが、現代の利用例として竹簾を示す。生産地は和歌山県、高知県、山口県等。
メダケ(女竹)
稈は柔らかく、かつ粘性が強いことから竹工芸品、建築素材、日用品等の曲げ物に多く利用され、歴史的な建造物には至る所に使われている。
関東から琉球まで 広い範囲に分布。千葉県の房総半島には海辺から山麓に至るまでメダケの大群落が広がり、メダケ原竹の主産地となっている。
カンチク(寒竹)
秋から初冬にかけてタケノコが出るので寒竹と呼ばれる。宮城県から琉球まで分布するが多くは庭に観賞用として植栽されている。
原竹材は節高であるが細長く、肉厚で柔軟かつ弾力性に富み、伝統的建築物や竹工芸品に広く利用されている。一般には下地窓としての利用が多い。
マダケ小径竹
植物的にはマダケそのものであるが、利用面から見た時のマダケ竹稈の細いものを指す。
竹材は緻密で弾力性に富み、さらに火あぶり等の一次加工によって光沢 を増すことから、古来、数々の文化財に使われてきた。桂離宮の池を取り巻き点在する茶室にはマダケ小径竹が多く使われている。各種の竹垣にも使われ四つ目 垣はまさにマダケ小径竹による芸術である。
京銘竹
白竹(しらたけ)、ゴマ竹、図面角竹(ずめんかくちく)及び亀甲竹(きっこうちく)の4種の一次加工材であり、建築、美術工芸、茶華道等の伝統文化を支える素材として欠かせない。
※ 「原竹材に関する調査報告書」(日本特用林産振興会、平成15年3月による。取りまとめは竹文化振興協会専門員・農学博士 渡邊政俊氏)
渡邊政俊氏の竹Bamboo Home Pageはhttp://www.ky