木蝋(もくろう)-文化財を維持する特用林産物

未来を拓く産業としての<木蝋>

 

 
夕日の産業でなく朝日の産業として
 サトウ・ハチロー作詞、中田喜直作曲の美しい童謡「ちいさい秋みつけた」。
  だれかさんがだれかさんがだれかさんがみつけた
ちいさい秋ちいさい秋ちいさい秋みつけた
むかしのむかしの風見のとりのぼやけたとさかにはぜの葉一つ
はぜの葉あかくて入日色
………… ♪
 この歌を知っている皆さん、日本特用林産振興会がハゼの振興を願っているって知っていました?もちろん知りませんよね。では以下を読んでください。
 ハゼノキから製造する木蝋 (モクロウ)は江戸時代から農家の重要な換金作物であり、また、藩の財政を豊かにする作物でした。木蝋生産は明治40年代をピークに大正に入ると生産・消 費が落ちてきて、価格の安い石油系のパラフィン蝋に取ってかわられました。昭和30年代まではポマードやチックなどへの需要があり輸出量も多かったのです がその後急速に需要が減少しました。
しかし、木蝋は、蝋燭だけの用途ではなく魅力的な無限の用途を秘めています。多くの分野の技術者がその新しい用途を開発してくれることが日本特用林産振興会の願いです。
 櫨の栽培が盛んな地方では並木にも櫨を植えているのでこのような美しい景色が見られます(久留米市柳坂曽根)。ボランティア活動でも並木にハゼノキを植えているところがあります。将来の美しい景色が楽しみですね。
 ハゼノキを栽培して木蝋を生産していた地域は九州と四国の愛媛県です。愛媛県内子町は木蝋で繁栄した商家群を国の重要伝統的建造物群保存地区として指定を受けていますし、熊本県水俣市には公設資料館「はぜのき館」があります。

 

櫨ちぎりから木蝋の製造まで

 
  ハゼノキの品種改良は江戸時代から取り組まれ、優れた品種の数種を中心に栽培されてきたのですが、200年以前に開発され昭和2年に昭和福櫨と命名された 品種を長崎県島原半島では大事に守り雲仙普賢岳噴火の被害を乗り越え、お茶畑をつぶして保存林を作っています。含まれる蝋分は普通20%台ですが昭和福櫨 は30~35%の含有で大事にされるのももっともです。雲仙普賢岳の噴火で火砕流のために優れた造林地が被害に遭い、火砕流の危険からその地域に入れなく なったことは大変残念なことです。
櫨ちぎりは、高いところで実をとる作業で、危険でもあり重労働です。そこで、木を低く仕立てたり、リフトを使ったり生産性を上げる工夫がなされています。

 

木蝋の製造

 長崎県にお住まいの本多俊一さんはお父さんの家業であった木蝋の工場を「動く資料館」として引き継いでい ます。製造法は油圧の機械で圧搾するところなどを除いて基本的には江戸時代と同じ方法で木蝋を製造しています。時々は子供たちにも蝋の抽出から蝋燭の製作 まで体験学習をさせています。
 現在の苦しい状況の中で伝統産業を守って次世代に伝える努力があってこそ将来が「朝日のように」開けてくるのです。
  お父さんの仕事を「うごく資料館」として残している長崎県の本多俊一さんです。お父さんの本多正則氏は、ハゼ苗木の生産、苗木生産者の養成、低木管理技術の普及の功績により平成3年6月に日本特用林産振興会会長より表彰を受けています。
  工場に集めた櫨の実
  実はバラバラにして潰します。
  蒸気で蒸した後、伝統を受け継ぐ玉締め圧搾機で絞ります。
  別の工場では化学薬品(ノルマル・ヘキサン)を使って蝋分を抽出しています。こちらの方がずっと取れる蝋の量が多く、経済効率では遙かに勝っています。
(福岡県、荒木製蝋合資会社)
  溶け出した蝋は容器に注ぎ分けて冷やされます。
  天日で晒す
─ 天日で30日から40日晒すと白い蝋になります。
  晒す前と晒した後の蝋です。
左を生蝋(しょうろう)右を白蝋(はくろう)といいます。
  和蝋燭の製造
─このように手で大きくしていきます。
  絵蝋燭
会津では祝い事には欠かせない絵蝋燭です。聖バレンタインデーにチョコレートばかり贈らないで、蝋燭を贈るのもいいと思いませんか。手作り蝋燭なんて絶対受けます。実は恋人の間ではもう流行なのですが。

 

木蝋の用途

 日本の国技である相撲。お相撲さんの髷を結う鬢付け油には木蝋が欠かせません。あの激しいぶっつかり合いで、その他の油ではバラバラになってしまうのです。木蝋はジャパンワックスと呼ばれてヨーロッパ、アメリカにずっと輸出が続いています。
 ポマード、チックなどの整髪料、クレヨン、色鉛筆、食品、医薬品、口紅など化粧品のほか、トナー、インクリボン、CDなどOA機器にも使われます。ま た、天然材料の良さを活かしてシックハウス症候群対策としても良いコーティング剤が開発されています。
 髪を束ねてバラバラにしない働きと、煎餅がくっつかない、この相反する働きを複合的にやってのける優れものの天然材料が木蝋なのです。
シックハウスの抑制
日経産業新聞2002.9.19より

 木ロウ、カルナウバロウ、キャンデリラロウなどの植物から抽出した天然のロウを原料とする住宅用コーティング剤が開発された。シックハウスの原因と言わ れるホルムアルデヒドなどと分子構造が類似しておりこれらの化学物質を吸着出来る。
 建材から出る化学物質を4分の1に減らし、浮遊する化学物質の2割を吸着するという。

 

 

   看護士さんの戴帽式─看護士さんの戴帽式で行われるキャンドルサービス。蝋燭の灯は世界中で好まれ、また、人の生命に関わる厳粛な行事にも各国で蝋燭が使われます。
 スマトラ沖大地震及びインド洋津波被害の死者を悼む行事も各国で蝋燭の灯がともされました。
    結婚式のキャンドルサービスも奮発して和蝋燭でやってもらえれば生産者の収入となり櫨の造林に投資できます。いかがでしょう?これからの新婚さん。30年 で石油が枯渇するとすれば、あなたの子どもが結婚するときはキャンドルサービスもできません。子孫のために櫨を植えなければ。

 

テレビを消して─

 子供たちに、「テレビを消して蝋燭でご飯を食べようか」というと今まで見ていた人気アニメを消して食事に集中しました。
 1週間に1度木蝋の蝋燭で食事をしてもらえたら木蝋生産者は元気が出ます。親子の会話回復のためにいかがでしょう?
 「蝋」という字は虫偏だけどなぜでしょうか?左はハゼ木蝋の蝋燭、右は蜜蝋の蝋燭です(花粉の色がついています)。蝋燭はミツバチの作る蝋(蜜と一緒に お菓子のように食べることもできます)から作ったのが最初と言われています。カイガラムシも蝋を出します。
 価格では石油系のパラフィン蝋にかなわない動植物系天然ロウ(生命蝋)を皆さんで支えて発展させてください。30年もすれば枯渇するという石油に頼らな いで、永遠に収穫できるバイオマス資源を振興するのが私たちの願いです。
【参考資料】
 □ 木蝋日本地図 ─ 櫨の実産地と木蝋スポット(PDF)
 □ 櫨の実の生産量(PDF)
 □ 木蝋の生産量/輸入量/輸出量/消費量(PDF)
 □ 木蝋の輸出量と輸出先(PDF)
 □ 日本木蝋商工業協同組合名簿/支援して頂いている皆様(PDF)
 日本特用林産振興会では平成16年度林野庁補助事業として木蝋に関する調査をとりまとめました。それはこのホームページのほか報告書とビデオになっておりますので関心のある方はご連絡下さい。

[協力]
林野庁経営課特用林産対策室、野田泰三、犬丸直、田中穣、広瀬立成、大石道義、日本木蝋商工業協同組合

*報告書は在庫なし

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